タイポップ(T-Pop)カルチャーの魅力と世界に向けた「タイ」の発信

13/07/2022

タイポップ(T-Pop)カルチャーは、タイのアーティストや俳優、関係者の才能と、クリエイティブでオープンなタイ社会から生み出されたエンターテインメントであり、多様な音楽、映画、ドラマといった文化を世に送り出しています。T-Popには日本を含む世界の様々な場所で話題となっている娯楽性が表現されています。

T-Popの潜在力は世の中のグローバル化、インターネットやスマートフォン、デジタル媒体の使用、そしてコロナ感染症の流行によってもたらされました。コロナ禍では、タイを含めた世界中でオンラインを利用したエンターテインメントを楽しむ人が増え、良質なT-Pop作品は世界中の人々の目に触れ、タイに外貨をもたらすビジネスとなり、海外のファンが増えました。

タイの娯楽産業はタイを世界に向けて休むことなく発信する媒体であり、世界の各地でタイのエンターテインメント文化は注目され、ひいてはソフトパワーとなっています。



T-Popとは何か?

T-Popはタイのポップカルチャーのことであり、音楽に限らずライフスタイル、ファッション、芸術、新しい時代の考え方のことであり、同じ場所に留まることなく進化し拡大し続けています。

T-Popミュージックは流行する多様なタイ音楽文化のことであり、決まった定義はありません。アメリカンポップ、J-PopそしてK-Popといった世界の音楽シーンから影響を受けることで時間の経過と共に音楽的に成長し、デジタルプラットフォームを利用することで世界が開かれ、さらに音楽を視聴する流行が後押ししました。タイの音楽は発展し続け、独自のユニークな音楽を生み出しています。

T-Popの特徴としては、人々の生活と共にある音楽ということでしょう。歌いやすいポップミュージックでも、ファンクやロックでも、最近のどんな音楽ジャンルでも、歌手がダンスを踊っても踊らなくても、歌詞がタイ語でも英語であろうとも、現代のタイ人によって創作された曲であれば、T-Popと呼べます。

自由な発想から創作されるタイドラマや映画もT-Popカルチャーに含まれます。タイ社会が開放的で多民族国家であることから、タイのエンターテインメントは枠にはまらない作品を生み出してきました。例えば日本から影響を受けたボーイズラブ(BL)ドラマは、LGBTQに対してオープンであり男女が平等であることが表現されています。タイのBLドラマは日本で視聴される海外ドラマの上位3位にランキングされています。

同時にT-Popミュージックについては、ドラマや映画の挿入歌として使われたことで注目を集めました。ドラマの人気に付随してT-Popミュージックも好まれています。


T-Popの例

言うなれば、日本で注目されるT-PopカルチャーはBLドラマから始まっています。

2020年、新型コロナウイルス感染症の流行初期に、日本ではステイホームが推奨されたことで、タイドラマを観る人が増えました。それは、タイのイケメンと称される俳優のブライト(ワチラウィット・チワアーリー)とウィン(メータウィン・オーパーイアムカジョン)主演のドラマ『2gether』から始まりました。

2gether』はアセアン、日本、中国、ラテンアメリカなど世界各地で人気を博し、ブライトとウィンのファンクラブが世界中にできました。ブライトのInstagramのフォロワーは1520万人、ウィンは1350万人を数えます。Twitterではブライトの日本国内の公式ファンクラブのフォロワーが144,000人、ウィンは104,000人となっています。

2gether』の魅力はタイの大学生の生活を映し出したことです。日本の視聴者は他のタイBLドラマにも関心を持つようになり、そして簡単には抜け出せない、いわゆる「タイ沼」にはまるといった現象が起きました。

また『2gether』のドラマ内で使われた音楽が日本でも人気が出ました。例えば、バンドSCRUBBの曲、そしてブライトが歌ったドラマの挿入歌「カンクー」はYouTubeの総再生回数が4300万回を超え、日本国内のショッピングセンターでも曲が流れるほどでした。

日本でのT-Popミュージックについては、日本の音楽業界でもタイ人アーティストへの注目が高まり、日本人アーティストとコラボレーションする作品がリリースされています。例えば、スタンプ(アピワット・ウアターウォンスック)や、バンドSingularのボーカルであるシン(トッサポン・アートワーナンタクン)といったアーティストです。



スタンプは「日本国内でタイドラマに注目が集まったことが、日本で既に活動しているアーティスト、日本ではまだ知られていないアーティスト共に、曲に関心を持たれる大きな力になった」と話します。

さらに、個性的で斬新な楽曲が世界で認められ賞を受けたり、国際的な舞台でパフォーマンスを披露するアーティストもいます。例えば、ミリー・ダヌパー、プーム・ウィプリット、トイThe Toys、ヴィオレート・ウォーティアが挙げられますし、また豊かな才能が世界で注目されるタイ人アーティストもいます。BLACKPINKのリサや、Got7のベムベム、ニックンやネネ(ポンナッパン・ポンペンピパット)などが挙げられるでしょう。


T-Pop-ピンチをチャンスに変える

コロナ禍では、感染症の蔓延と隔離政策がサプライチェーンに影響を及ぼしたことで世界各国への物の輸出が滞りました。しかしながらT-Popカルチャーの輸出は拡大しました。

オンラインプラットフォームを通して作品を供給するタイのエンターテインメント・ビジネスは、世界中の人々がステイホームをする時期にT-Popを大きく成長させました。物流の壁がないことからタイのエンターテインメント産業はデジタル商品として大きく飛躍したのです。同時に、エンターテインメント産業はいつでもどこでも、時間や距離の制約なくリアルタイムで消費することが出来ます。

デジタルメディアというチャンスが、唯一無二のタイのBLドラマを世界におけるBLコンテンツ制作分野の牽引者の一員にしました。アジアの中で1位、そして世界でもトップといって良いでしょう。タイのBL作品はアセアン、中国、台湾、ラテンアメリカで人気があり、収益は37億円(10億バーツ)を超えました[1]

また、日本ではBLだけでなく多様なジャンルも含め、タイドラマが少なくとも30本は配信されています。2022年初頭には、ドラマ「F4 Thailand」が日本とタイで同時放送されました。タイドラマが、日本で本国と同時視聴できたのは初めてのことです。

T-Popミュージックにおいては、コロナ感染症の影響が続いている時期は会場でのライブコンサートは開催できませんでしたが、アーティストらはその間も楽曲を作り続けました。音楽プラットフォームやYouTubeは新しい世代のアーティストが自分の能力を世間に向けて披露する機会を与えました。創造性が土台にあるタイ文化が持つ元来の価値がデジタル時代に飛び出し、タイのエンターテインメント産業は、俳優も裏方も他国に引けを取らない人材を育成することが出来ました。

 タイ初のLGBTQをテーマにしたグループ4MIXT-Popがデジタルマーケットを使って成功した好例であり、特にラテンアメリカで人気があります。カオサンエンターテインメント㈱の役員であるプーリット・クンチョン・ナ・アユタヤ氏は次のように述べました。「T-Popグループのコンセプトは、ボーイズグループにしてもガールズグループにしてもとても難しい。特に、韓国の人気グループを見本にするのは難しい。そこで、ボーイズグループでもガールズグループでもなく、我々に出来ることは何かを振り返ると共に、ターゲットとしてオンライン上の世界に注目しました。もう一つの世界、それがLGBTQだったのです。」[2]グループは、とても重要なことでありながら、まだ地域によっては認められていないかもしれない性別の自由についての考えや見方を表現する役目を担っています。



T-Popの魅力-タイ文化の輸出

確固たるタイ文化、長い歴史を有する料理、観光、芸術文化といった基本の上に、タイ人の独創性が加わることによって、ドラマ作品やT-Popの曲はこれまでの考え方の枠を超えることが出来ます。タイはコンテンツを作り海外に輸出するまでになり、海外の人にタイファンになってもらうための媒体となっています。

日本人はタイドラマを見てタイについて理解することが出来ます。短期間の旅行よりも、タイドラマを見る方がタイ文化や人々の生活について深く知ることが出来るでしょう。例えば、『2gether』や『Sotus』といったドラマを見て、日本人は目玉焼きが添えられたガパオライス、豚ひき肉の入った卵焼き、ピンクミルク、大学の新入生歓迎の儀式、「パンパン袋」として親しまれたビニール袋に料理を入れて輪ゴムで結ぶ方法、ドリンクや飲料コップを持ち歩くための持ち手付きビニール袋、そしてタイ人がビーチサンダルを普段から履いていることなど、タイ人には日常で当たり前のことが、日本人には珍しかったり、タイ式イノベーションと感じたりします。このようなことをオンライン配信をするプラットフォームを通して意見交換することは、両国の人々を繋げ、お互いの理解をより深めることに寄与します。



音楽には国境がなく、言葉が分からなくても何かを感じることが出来ます。タイの音楽と日本の音楽は自然と結びついています。どちらも5音音階(ペンタトニック・スケール)なので、相手国の音楽を聴いた時に自然に鼻歌を歌えるし、近しく、慣れ親しんだ感じがします。タイドラマや音楽の日本での流行を受けて、より深い部分でタイ文化を理解するためにタイ語を学ぶ日本人が増えています。

ミュージックビデオやコンサートでも世界にタイらしさを伝えることが出来ます。例えば、BLACKPINKのリサのシングル「Lalisa」はK-Popですが、ミュージックビデオの中では、彼女はタイの衣装と冠を身に着け、タイのパノムルン寺院を登場させ、世界中の人がこの動画を視聴しました。総再生回数は1億回を超えています。

20224月に開催されたアメリカの音楽フェスティアバル「コーチェラ」に出演したMILLIミリー)はステージ上でカオニャオマムアン(マンゴーとモチ米のデザート)を食べました。さらに、彼女は「タイでは象に乗っていない」といった歌詞で、現代のタイについての正確な情報をパフォーマンスで表現しました。



ソフトパワー - 経済

タイドラマやT-Popミュージックといったソフトパワーには、コロナ以前に匹敵するタイへの収入や投資が期待されています。

PwC2021年のタイのメディア及びエンターテインメント産業の収益が6.3%成長し、5500億バーツに迫ると予測しました。さらに人々がメディア及びエンターテインメントに使った支出も2021年は高い成長率だと予測しています。映画産業は前年比54%増で76億バーツと最も高く、楽曲、ラジオ、Podcastビジネスは前年比27%増の123億バーツの成長です[1]

日本はT-Pop業界が期待を抱く市場です。20216月にタイ商務省がBLコンテンツのオンライン商談会を行った際には、2日間で1.3億円(36千万バーツ)の商談が成立しました。上位3か国は、日本、台湾、そしてベトナムです。

この数年はコロナ感染症の影響を受けて両国間の往来がなかなか出来ませんでした。日本人はタイのアーティストのファンミーティングを望み、オンラインによるファンミーティングが何回か行われています。例えば202110月には、ブライト&ウィンの1st ファンミーティングインジャパンが開催されました。



[1] https://www.pwc.com/th/en/press-room/press-release/2021/press-release-30-07-21-th.html#:~:text=%E0%B8%81%E0%B8%A3%E0%B8%B8%E0%B8%87%E0%B9%80%E0%B8%97%E0%B8%9E%2C%2030%20%E0%B8%81%E0%B8%A3%E0%B8%81%E0%B8%8E%E0%B8%B2%E0%B8%84%E0%B8%A1%202564%20%E2%80%93%20PwC,%E0%B8%9A%E0%B8%B2%E0%B8%97%E0%B8%AB%E0%B8%A5%E0%B8%B1%E0%B8%87%E0%B8%9E%E0%B8%B4%E0%B8%A9%E0%B9%82%E0%B8%84%E0%B8%A7%E0%B8%B4%E0%B8%94



今年になって日本はコロナ感染症の蔓延を抑えることが出来るようになり、海外からの入国制限が緩和しはじめています。そこで、人気俳優のシントー(プラーチャヤー・ルアンロート)をはじめ、タイのアーティストが日本のファンに会うために来日しはじめました。今後も多くのアーティストがコンサートやファンクラブイベントのために来日する予定です。ドラマ「I Told Sunset About You 〜僕の愛を君の心で訳して〜」の主演俳優ピーピー(クリット・アムヌアイデーチャコン)、ビルキン(プティポン・アッサラタナグン)、そして、歌手であり作曲家でもあるプーム(ウィプリット・シリティップ)、彼は英語の歌詞にのせて歌声を世界中に届けてきたアーティストですが、日本で8月に開催されるサマーソニックに出演します。他にも多くの俳優の来日が予定されています。



人気のあるタイ人アーティストが増え続けることによって、ビジネス分野では、日本におけるタイエンターテインメントビジネスに関心を持つ企業が増えています。多様なニーズに応え、良質で広範に渡るエンターテインメントビジネスに成長するため競争が生まれはじめています。


タイ政府はT-Popを強固なソフトパワーとして後押し

ソフトパワー5つのF Food / Film / Fashion / Fighting / Festival)の世界へ向けた発信は、タイの経済促進を目的としたタイ政府20ヶ年の戦略計画に入っています。

コロナ感染症が流行する以前、タイ大使館は都心の真ん中にある代々木公園で20年に渡り継続してタイフェスティバルを開催してきました。日本人にタイについて紹介し、タイを知ってもらいタイ好きを増やすことを目的としています。来場者は増加し、直近の3年間(2018-2020年)の開催では、毎年約3035万人がフェスティバルに参加しています。そして毎年多くのタイのアーティストがフェスティバルのために来日し、ステージでパフォーマンスを披露していました。

2020年から日本そして世界に蔓延したコロナ感染症の影響を受けて、2020年のタイフェスティバルは中止しましたし、2021年は良質で魅力あるタイドラマが日本国内で流行したことを受けて「タイドラマフェスティバル」をハイブリッド型で開催しました。タイ大使館の敷地内で小規模のイベントを行うと共に、ライブストリーミングでタイと大使館をつなぎ、3社の大手芸能事務所に所属する人気アーティストが生出演するオンラインイベントを行いました。日本のタイドラマファンに向けた特別なイベントであり、その模様はオンラインでも配信され、タイドラマファンから大変好評でした。



2022年、大使館は前年のテーマである「タイドラマ」を引き継いだ形で「T-Pop」をテーマにタイフェスティバルを完全オンライン開催しました。明るく、楽しく、快適なことが好きなタイ人らしさを生かすと共に、T-Popミュージックの流行や現代タイ人のライフスタイルも紹介しました。さらにタイ料理やタイ物産品の促進のためにT-Popが活用されました。

今回の開催にあたって、タイ大使館は、Workpoint Entertainment社の番組T-Pop Stage Showと協力して、2022515日にスペシャルコンサート「T-Pop Stage Show: Special Episode with Thai Festival in Japan 2022」を開催しました。コンサートには、8組の人気アーティストが出演を快諾し、ステージ、ライティング、音響などにもこだわりました。タイ、日本、アジア、そして世界各国から視聴され、合計再生回数は約130万回になります。当日、生配信中の最高視聴者数は75千人で、昨年開催したタイドラマフェスティバルの約3倍となります。さらに、当日のタイのツイッターでは、#ThaiFestivalinJapan109千ツイートでトレンド2位にランクインしています。

コンサートのアーカイブはYouTube: RTETOKYO (Playlist: Thai Festival in Japan 2022)でご覧頂けます。



コンサートは世界中から好評を博し、タイ人アーティストのポテンシャルの高さと、国際的なレベルに成長していることが証されました。また、国民同士が良好な関係を築き、T-Popを広く新しいグループの人々に紹介できたと言えるでしょう。


T-Popの今後の発展

今年のタイフェスティバルの成功について簡潔にまとめると、タイ政府とタイ・日本の民間企業との協力によって、T-Popの可能性の高さを世界に知らしめる後押しをすることが出来たと言えるかもしれません。

今回T-Popをテーマにしたオンラインイベントを初めて開催したことによって、多くのタイの企業が海外市場への拡大に関心を持っているということも分かりました。しかし、良いパートナーを探すことが障壁になっています。逆に日本の企業も、タイのエンターテインメント産業へコンタクトを取ろうとしています。

タイ大使館は、海外においてタイ人アーティストや俳優の作品を支援する柱であり、両国の民間企業が実際に協力関係を結ぶための橋渡しの役割です。

文化の違いは壁ではなく、人々を繋げる魅力であり、そこから世界の人々がT-Popをより強く求めるようになります。大使館は今後も日本国内で「タイの良さ」、昔ながらのタイ、そしてデジタル時代の最新のタイ、双方を紹介していきます。

来年、タイ大使館は再度代々木公園でタイフェスティバルを開催し、日本の方々にT-Popを届けるためにオンラインイベントの同時開催も考えています。そしてタイの観光、貿易、商品の人気を高めるためにもT-Pop産業を盛り上げたいと考えています。

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2022年6月




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