Time Out Tokyo Magazine がシントン大使にインタビュー

30/08/2022

駐日タイ王国大使が語る、東京で本場のタイカルチャーを満喫する方法

日本ならではの桜と紅葉の美しさ

ー東京でお気に入りの場所はありますか。

季節によって変わります。熱帯の国であるタイの季節は、雨季と乾季の2つだけなので、日本のそれとは大きく異なります。秋に木々が色づくこともなく、春に桜が咲くこともない。だから、春は桜の名所がお気に入りの場所となります。

大使館の近くには目黒川があり、桜を眺めながら水辺を歩くことができますね。千鳥ヶ淵も大好きな桜の名所の一つで、皇居のお堀の巨木から伸びた長い枝に桜が咲き誇っている様子には目を奪われます。

秋になると、私は妻と一緒に美しい紅葉を観に出かけます。高尾山は、紅葉がきれいなのはもちろんですが、タイに縁があるため、よく訪れています。山頂に向かう途中にはタイ国王・王室が贈った釈迦の遺骨、仏舎利を納めた白い仏塔があるのです。

また、御岳渓谷は川沿いの紅葉が美しく、お気に入りの場所です。タイの作家であるシーブラパーが書いた「絵の裏」という小説があります。日本を舞台に、新興エリートの青年(留学生)と王族の女性との恋を描いた物語ですが、その中に御岳も登場するのです。

私は、訪日する以前の若かりし頃にその小説を読み、日本で御岳という場所を探しました。ようやく訪れた時に、その美しさに感動したのを覚えています。

Photo: Kisa Toyoshima

日本でますます盛り上がりを見せる「タイカルチャー」

ータイの味を楽しむならどこに行きますか。

大使専属のシェフをタイから連れてきているので、「大使公邸は日本で一番おいしいタイ料理屋さんだ」と、よく言われます(笑)。

もちろん、東京にはタイ料理の名店が数多く存在します。私が学生の頃は2〜3軒程しかありませんでしたし、タイから輸入する食材の数も限られていたので、それほど本格的なものではありませんでした。

今は東京に何百というタイ料理店がありますから、1、2軒を選ぶのはとても難しいですね。タイ商務省は「タイ・セレクト」という認証システムを運営しており、現在では日本全国で170近いレストランが認証を受けて、登録されています。東京で本格的なタイ料理店を探すなら、「タイ・セレクト」のサイトをぜひ参考にしてみてください。

ー東京でタイとその文化についてもっと知りたいと思う人のための、コミュニティーや団体はありますか。

日本とタイの友好関係は非常に長く、貿易関係は600年以上、外交関係は1887年に正式に樹立して以来135年になります。友好と協力を促進する団体の中で最も歴史が長い「日本タイ協会」は、会員向けにセミナーやイベントを開催するほか、機関誌を発行しています。会員にはタイに駐在していた日本人ビジネスマンが多く、元駐タイ大使が顧問を務めています。

タイ舞踊を習いたい人のためのアカデミーもいくつかあります。経営者は日本人、タイ人のどちらもいますね。例を挙げるとタイ人が校長を務める「インターナショナル・タイダンス・アカデミー」や、タイで舞踊を学んでタイ文化省の認証を受けている日本人女性が主宰する「秋元加代子タイ舞踊団」などです。

料理に興味がある人は、一大タイ人コミュニティーがある錦糸町の「タイ教育・文化センター(ThaiTEC)」をお勧めします。ThaiTECでは、フランスの「ル・コルドン・ブルー」(パリを中心に世界中で展開されている料理教育機関)に相当するスァンドゥシット国際料理学校というタイの有名料理学校を卒業した、経験豊かな講師による、タイ料理教室を開催しています。

また、東京にはタイのボクシング、ムエタイのジムが豊富にあり、プロになるためだけでなくエクササイズとしても利用できます。三ノ輪に本部がある「ウィラサクレックムエタイジム」は、元プロ選手が経営するジムで、都内各地に店舗を設けています。

このほか、タイのスターやドラマが好きな若者たちがSNSで交流してグループを作ることもありますよ。ここ数年、コロナ禍の影響で家にこもることが増えたせいか、タイドラマの人気が日本でも高まっています。2021年には大使館でファンミーティングを開催し、ライブ配信をしてスターとファンをつなぎました。中にはタイのロケ地まで足を運ぶ人もいます。

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Credit: Time Out Group Plc.